『フュメ・ド・ポワソン』は、フランス料理で使われる魚のダシのこと。
魚の豊かな香りと、コクのある味わいが特徴です。ただ、家庭の魚料理でフュメドポワソンを使う機会ってなかなか少ないですよね。いつも使っている「ほんだし」や、「鶏ガラだし」をフュメドポワソンに変えてみるだけで、料理のクオリティが『おっ!』っと思うくらい上がりますよ!
クラムチャウダーやパエリヤ、ブイヤベースにフレンチのソースなど色々と使えるので、
「ちょっと作ってみたい!」という方はぜひ、最後までご覧ください。
Twitter @kaeruchef
『フュメ・ド・ポワソン』ってなに?
『フュメ・ド・ポワソン』(Fumet de poisson)とは、フランス料理の魚介の出し汁のことです。
主に、フランス料理の魚介ソースのベースになります。フュメドポワソンをベースに、ブイヤベースやスープドポワソンを作ったり、アメリケーヌソースをとったり、ホタテのコンソメのベースとして使ったり…用途を上げていけばキリがないほどたくさんの料理に使われています。
そして、一重にフュメドポワソンと言っても、作り方によって様々なタイプのものがあります。
フュメドポワソンのタイプと使い方
✅1.クリアに透き通った透明タイプ
→魚をアラをカリカリになるまで焼き上げてから出汁を引く。日本料理の潮汁のように透明度が高く、そのままスープなどに使えます。ぜったいに濁らせたくない場合はこのタイプのフュメドポワソンを使用します。
✅2.透明度は下がるが少し味の濃いタイプ
→魚のアラを、焼き魚を作るイメージでオーブンでロースト。これをベースに出汁を引いていきます。大量仕込みの場合はこちらが便利。ある程度どんな料理にでも使えるタイプになります。
✅3.味を限界まで引き出した濃厚タイプ
→魚のアラを鍋で炒め、細かくなるまで潰して出汁を引いていきます。かなり味が出ますが濁りやすいタイプ。しっかりと魚の風味を出して、力強い味を求める時はこれがおすすめ。※今回の記事で作っていくのはこのタイプ。
フュメドポワソンの意味
フランス語で、『《フュメ》香り、香る、燻製された 《ド》〜の 《ポワソン》魚 』という意味。
フランス料理ではダシのことを《フォン》と呼びます。ですので、魚のダシは《フォン・ド・ポワソン》と呼んでも間違いではありませんが、《フュメ》香りを意味する言葉が使われます。
ではなぜフォンドポワソンと呼ばれないのか?実は昔の文献にも明記されていないんです。そこで、私個人の解釈になりますが、「出汁に、魚と分かるしっかりと強く良い香り」があり、他のダシと少し違い「軽く煮詰めただけでそのままソースに使えるくらいのポテンシャルがある。」
このことから、エッセンスとしての意味合いを持ち、香りを意味する《フュメ》が使われているのではないかと考えています。
あくまで一シェフの個人的な見解なのでご参考までに…。
フュメドポワソンの家庭でオススメの使い方5選+α
フュメドポワソンは、特にフランス料理のソースに良く使われます。フュメドポワソンをベースに、バターで仕上げたもの、クリームを入れて煮詰めたもの、シンプルにオリーブオイルとトマトを入れて仕上げたものなど様々です。
ここでは、もう少し家庭で実用的に使える方法を載せていきます。
フュメドポワソンを使った料理
1.シーフードグラタン
魚介をたっぷりと使ったグラタン。ホワイトソースを作る時に最後にフュメドポワソンを加えると、魚介の風味とコクがUPします!コンソメやブイヨンを使うよりも、味の一体感が出るのでオススメ。
2.アクアパッツァ
アクアパッツァは、水で煮出すよりもフュメドポワソンをベースに作った方が断然味が濃いです。旨味がぎゅっと詰まったアクアパッツァとパン屋さんのバゲットでディナーを。
3.魚介系のパエリヤ
鶏ガラだしなどでも作れますが、やっぱり魚介系はフュメドポワソンを使って炊き上げた方がおいしい。魚介系のパエリヤを作る時にはぜひ。
4.魚介系パスタ
ボンゴレなど、魚介系のパスタの隠し味に入れるとワンランクアップします。昆布茶などでもいけますが、より風味をアップさせたい時に。
5.アヒージョ
アヒージョの隠し味に入れることで旨味がアップします!かなり美味しいアヒージョになるので、多めに作って次の日にパスタにしてください。
ちょっとおしゃれな使い方としては、フュメドポワソンで魚に火を入れてナージュ仕立てにしたり、一番出汁と合わせてみたり、シーフードカレーのベースにも良いですし、使い方は本当にたくさんあります!
手軽に使える市販のフュメドポワソン
家庭で使うのであれば顆粒タイプがおすすめです。液体タイプも売っているのですが、正直おいしいと思ったものがありませんでした。それに、ホワイトソースに混ぜる時なども、顆粒タイプの方が使いやすいですし、パスタなんかにも手軽に使えます。
ちなみに「味にめちゃめちゃこだわりたい!」という方はぜひ作ってみましょう。
やはり、ちゃんと作ったものが1番です。
少し手間はかかりますが、今回はいつもお店で作っている本格的な方法をお伝えしていきます。
本格的なフュメドポワソンの作り方
フュメドポワソンには、大きく分けて3つの作り方があります。※細かく分ければもっとたくさんありますが…
魚のあらをオーブンで焼いてから取るもの
生のまま水から入れて取るもの
炒めて取るもの
メモ
使用する魚のアラは、基本的にクセの少ない白身魚のものを使います。ですが養殖のスズキなどは脂が多く臭みも強いのでおすすめしません。また、青魚も使ったことはありますが、フュメドポワソンにはクセが強すぎて向いていないので注意です。ちなみに、サーモンもあまり向いていません。
料理ごとに魚のアラを変えるのが理想的ですが、そうもいきませんのでお店では舌ビラメやヒラメ、鯛などを使ったりします。
今回は比較的使いやすく、手に入りやすい鯛のアラで作っていきます。
『フュメ・ド・ポワソン』レシピ
材料(出来上がり1L)
- タイのあら 2キロ
- 玉ねぎ 1個
- セロリ 1本
- ニンニク 1/2個
- タイム 少し
- ローリエ 小さめ1枚
- 白コショウ 少し
- 白ワイン 200ml
- 水 2.3L
- 岩塩 少し
- ピュアオリーブオイル 適量
下準備
1.タイのあらは軽く洗っておき、内臓が付いていたら取り除く。流水に30分程度つけて血抜きをしておく。
2.玉ねぎは、皮をむいて繊維にそってスライスしておく。
3.セロリは、繊維に逆らいながら玉ねぎと同じくらいの大きさに薄切り。
4.ニンニクは、皮付きのまま横半分にカット。
作り方
1.鍋にオリーブオイルとニンニクを入れて中火で香りが出るように軽く炒める。
2.玉ねぎ、セロリを入れ、強火にしてでサッと炒める。
注意ポイント
焦げやすいので手早くまぜてください!
3.タイのあらを入れて、強火のまましっかりと余分な水分を飛ばすように炒めていきます。
ポイント
強火で炒めるのがポイントです!火を弱めるとしっかりと炒められないので、焦げ付きやすいですが頑張ってまぜましょう!
4.タイのあらが細かくバラバラになるように潰しながら炒める。
5.しっかりと炒められたら、白ワインを入れ、水をひたひたになるくらい入れる。※今回の分量で大体2.3Lくらい
6.中火の強めにして、アクや脂を良く取りながら沸騰させる。
ポイント
脂は特にしっかりと取りましょう。フュメにおける脂は一切必要ないもので、残っていると濁ったり、味が出にくくなったりします。
7.沸騰したら弱火にして、岩塩と残りのハーブや香辛料を全部入れ、コトコトと30〜40分程度アクや脂を取りながら煮ていきます。
火加減は大体このくらい。ちゃんと水分が対流して表面がコトコトするようにしましょう。
アクや脂をしっかりとり、火加減も丁度よく煮出すと、こんな感じに澄んできます。
8.味がしっかりと出たら、ペーパーで濾していきます。最後の方は、あらをザルに入れてそのまま5分くらい置いておくと残さず濾せます。
9.氷水に当ててすぐに冷まします。これで完成です。
ゼラチン質が高いので、冷めるとこんな感じに固まります。ちなみに次の日になるともっとガチガチに。
骨の髄からしっかりと味が出ている証拠です。
フュメドポワソンの失敗しやすいポイントとコツ
失敗する原因は様々です。
✅魚のアラの鮮度が悪い
食材の鮮度はとても重要です!これで半分は決まります。特に魚は傷みやすい食材なので鮮度は超重要です!
✅炒める火力が弱い
最初は「こんなに強火でいいの?」とビビります。しかし、強火であることが非常に重要で、特に魚のあらを炒めるときは弱火にしてしまうと、アラから水分がどんどん出てきて煮ている状態になります。すると水分から嫌な匂いが出てきて、いいダシがとれません。
水分を飛ばしながら炒めるために強火は必要です。
✅沸騰する前に、アクや脂をしっかりと取れていない
沸騰するまではかなり勝負です!アクや脂は、沸騰してしまうと多少なりとも乳化してしまいます。
すると何が起きるか?
乳化すると、濁るので「味が出にくい、アクも出にくい、香りも悪い」おいしくないダシになるのでここは重要です!
✅沸いた後の火加減が強い、または弱い
沸いた後は必ず弱火でコトコトです。アクや脂はずっと出続けます。火加減が強すぎると、ダシを取っている途中で乳化して悪いダシになってしまうので注意。かといって弱すぎも良くありません。水分は対流してはじめて味やアクが出てきます。火加減はかなり重要なんです。
フュメドポワソンを失敗しないために気をつけること
❶鮮度のいい魚のあらを使う
❷強火でしっかりと水分を飛ばして炒める
❸沸騰前にアクや脂をしっかりとる
❹火加減に気を付ける
補足
このフュメドポワソンは、あまり煮詰めて使うことはおすすめしません。煮詰めていくと香りが飛ぶだけでなく、嫌な匂いも出たりします。なるべく適量の水で濃いダシを取ることが重要です。
まとめ
『フュメ・ド・ポワソン』はフレンチの基本の魚のダシ。
和食のほんだしなどとはまた違う風味があり、使い方によっては様々な料理に使えるおいしいダシです。
自家製の方が美味しいものが出来ますが、ちょっと難しいのでポイントをしっかりと押さえてやってみましょう。
味がしっかりと出ていて、香りがよく、濁りのないフュメは冷めていてもおいしいですよ!
料理の味はダシひとつで変わってくるので、ぜひ活用してみてください!
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